診察の話。
月に一度、診察があった。
初めは病院に行く事で安心していたが、途中から診察にあまり意味がないように感じていた。
診察を受けたところで症状は悪化していくし、日々現れる起立性調節障害による様々な症状については対応をその都度自分で調べて、考えて、納得して、結局は様子を見るしか無かった。
診察の時に症状を伝えても起立性調節障害の症状だから…という感じで答えは何も無かった。
そんな中、3月に起立性調節障害の診断をして下さった主治医が産休に入ることになった。
月に一度の診察で全部で5回ぐらい診察を受けた。
毎回、先生が30分ぐらいかけて息子の話を聞いてくださった。息子の病状となんとなくは性格も理解をして下さっていたので、先生が変わる事にはやはり不安があった。
診察時は先生が話を盛り上げて下さる為、息子は元気に話ができた。日常生活では心が落ち込んでおり、体調がよくないことを先生に相談した。
身体表現性障害があるためカウンセリングが良いのでは、と提案を受けた。
学校に通えていないことを伝えると、体調が悪いため仕方がないが、このまま社会から離れていく事は心配があると言われた。
学校に行くことの良いところは、
◦生活リズムができる
◦お友達と話ができる
◦給食を食べる事で栄養がつく
ということ。勉強はその後で良い、と息子に説明してくれた。息子は頷いていた。
先生からメトリジンが効いているかどうかの検査をしたいところだが、この感じではまだ検査は難しいだろう、との事で見合わせる事になった。
次からカウンセリングがはじまる。
カウンセリングは、
◦所要時間は1時間。
◦話があまりしたくなければトランプやるなどのゲームをする事もある。
◦悩み事があればなんでも話してよい。
◦カウンセリングをする中で必要が有ればWISCを受ける事もある。
と説明を受けた。
息子は元々人と話す事が好きなのでカウンセリングはそんなに心配していなかったが、体力が、持つどうかが心配だった。その日の体調、気分で、早く切り上げても良い、ドタキャンもOK、との事だったので次からカウンセリング予約をした。
カウンセリングで何かが変わるのだろうか?
一つ違う治療が始まる事で何かが変われば良いのだけど。
待望の夏休み。
待ちに待った夏休み。
この夏休みはとにかく心と体を整える事に専念しようと息子に話した。
よく遊び、よく笑い、よく食べ、よく寝て。
勉強は無理にしなくて良い、そう伝えた。
息子はよく遊んだ。
よく笑った。
仲の良い友達が遊びによく連れ出してくれた。
脳みそが疲れる、と、友達とのオンラインゲームがあまり出来なかったが、少しずつできるようになった。
どんどん、いつもの息子を取り戻していった。
私には久々にたくさん遊んでいる様には見えていたが、体力はそんなにもたないとのことで、遊べても3〜4時間ぐらい、つかれたらすぐ休む様に自分では気をつけているとのことだった。
家にいる時はクーラーがあり涼しい為体調が悪くなる事もないな、と本人も自覚していた。
体調が優れない朝は横になる事ができるので体にも心にも負担が少ないらしかった。
自分の体調をうまくコントロールしながら生活をしているのだ。
こんなに楽しそうに日常生活を送れているのに、まだ本調子ではない事に、がっくりとしてしまった。なかなか簡単には治らないのだな。
夏休みが終盤に入り、勉強はしなくて良い、とは伝えていても気になる様で、宿題どうしよう、やっぱりやった方が良いかな、とポツリポツリと言い出した。
気になるならやろうか、やるなら手伝うよ、と話した。
ゲームをずっとしている毎日だったが、急に部屋に入り宿題をしだした。
担任の先生には、この夏休みは心と体を治す期間にしたいので宿題、勉強は多分しない、と伝えておいた。先生はそちらを優先した方が良い、と言って下さった。
中学になり、勉強恐怖症みたいになっていた息子。自ら宿題をやろうと動き出せた姿を見ただけで涙が溢れてしまった。
宿題は全部終わらせる事は出来なかったが、数日間、机につき問題を解く事ができた。
なんとか、自分を取り戻す、楽しいと思える日々を過ごせる夏休みにして欲しかった。
こうして、一歩ずつ、息子のペースで前進しよう。
歩けるようにはなってきたが…
身体表現性障害による足に力が入らない、という症状はどんどん改善していった。
歩けるようになってくれば学校に行くことに対する不安が減ってくるのではないか、と思っていたがそうではないみたいだった。
起立性調節障害での学校で体調が悪くなるかも、というイメージはなかなか拭えない様子。
登校できるのは週2〜3回。
しかも3・4時間目だけ。
登校する、ということ自体、ハードルが高い。
ある日学校で校外授業があった。1日を通して
学校の周辺を班で歩いて探索し、昼食は街の好きな喫茶店や食堂などで食べてくるという行事。
足の症状が回復してきたとは言っても起立性調節障害の症状はまだ治っていない。長時間歩く事は難しそうだった。
それでも教室の授業は嫌だが、校外授業は楽しみと言った。午前中〜昼食までの参加できるように先生方が考えてくださった。
元々友達の幅は広く、人と話す事が大好きな息子。学校が嫌と言うよりは、教室内の授業、ということに苦痛を感じているみたいだった。友達とは会っていたいらしい。
当日、待ち合わせ場所に送って行った。張り切って待ち合わせ場所まで行っていた。
昼食を食べたレストランまで迎えに行く。
仲間たちとレストランから出てきた。
そこで友達と別れた。
車に乗った途端、バタンと、倒れ込んだ。
すごく頑張ったのだろう。
帰宅後少し休んだら息子が話し出した。
やっぱり、友達は良いね。
授業は嫌だけどこんな毎日なら学校行けるな。
早く治ると良いね。
少しずつ回復
一度、外泊ができたらその後は
結構順調に遊びに行けた。
その次の週には、博物館、次はグランピング、次はまだちょっと寒かったけど海水浴、プール。
毎週のように計画して連れて行った。
息子も次はどこ行くの?
と楽しみにしてくれていた。
最初は車椅子がないと移動が難しかったため、
車椅子が使える施設しか行けなかったが、
日を追うに従って、足で移動できる距離が長くなり、しっかりと立てるようになって来た。
病院の先生は以前から、筋力が下がるのでなるべく車椅子に頼らない生活をして、と言われていた。ずっとそれが気になってはいた。
そろそろ車椅子卒業でいいんじゃない?車椅子があると頼ってしまうし。
と息子に聞くと、うーん、まだ不安だけど…
と半ば無理矢理、手放してみることにした。
すると、車椅子が無いならないで、何とかなるようになった。もう、ハイハイもなくなった。
長時間歩く事はまだ難しいが、日常生活はハイハイしなくても、学校内も車椅子が無くても生活できるようになった。
一つ大きな壁を乗り越えられた。
久々の外泊。
いつも元気だった息子が歩けないと知り、
義理の姉が、近所でホタルが見れるから泊まりに来ない?
と誘ってくれた。息子に、ホタル見に行く?と聞くと、昆虫好きの息子は行きたい!とすごく良い反応をしてくれた。
すぐに行く約束をした。
息子は、小学校時代に学校の行事でやったカヌーをやりたい、と以前に言っていた事を思い出した。
カヌーなら足が立てなくても出来そうだな、と思いカヌーやる?と聞いてみた。これも快諾。やりたい!
たまたま、義理の姉のお宅の近くにはカヌーができる施設があったのでそこを予約した。
引きこもっていた息子をやっと外に連れて行ける!息子より、主人と私の方が楽しみにしていたと思う。
当日の道中、車の中で、みんなで久々に色々と話した。息子も話に加わってくれた。笑っていた。
お宅に着いたその日の夜、ホタルを見に行った。
歩いて数秒のところに川。ふらふらしながら歩いて行った。ホタルが舞っていた。
初めてみたホタルに、大興奮だった。
翌日のカヌー。
息子はなかなか早起きはできない日々を送っていたが、この日は早く起きれた。
義理の姉の家族もカヌーに付き合ってくれた。
手に力が入らないという症状があるため、やや不安そうだったがカヌーに乗ると、コツを掴んだ、とスイスイ漕ぎ出した。
1時間ぐらいカヌーに乗った。
とても楽しそうだった。
その後は施設内で少し遊んだ。
帰る頃にはもう歩けない、となってしまいハイハイしていたが、非常に満足気だった。
連れて来てよかった。
息子が私の耳元でボソっと、この体の疲れは明日絶対動けないから学校行けないかも、と言った。
休めば良いよ、今日、こんなに遊べたんだから、と主人には聞こえないように話した。
息子の言う通り、翌日は動けなかった。
でも、表情は明るかった。
こんな日々を続けて行けば
元気になって行くかな、、、
さて、次はどこに行こう、、、
引きこもり生活。
息子が学校を休む時は、体調が悪い時もあるが、心が沈んでしまっている時も多かった。
体調が悪いとずっと起きれず寝込んでいるのでわかりやすいが、心が辛くて学校に行けない時が大変だった。学校を休むと本人が決断するまで時間がかかった。
今日は学校を休む、と決めても、休んでも良かったのかなー、と後悔している感じ。なんとなく、ドヨーンと暗いオーラを息子が纏う。
せっかく勇気だして休んだから嫌な事は考えず楽しもうよ、と何度も声をかけた。
何する?まずゲームする?と聞いても、
いや、うーん、、、
そんな感じだった。
そんな息子を1人にしておく事は心配だったが、そのままにして仕事に出かけた。
昼間帰ってきて、お腹空いた?
と聞くと、嫌、別に、、、と朝いた場所と同じところでYouTube見ていた。
わたしがYouTubeで見た先生方の言っていた通り、これがきっと、心へのエネルギーチャージ中なのだろうな、と思った。
簡単に食べれるものを作ったり、買ってきたりして置いておくと、お腹空いたかも、、、と言って寄ってきた。
夜になると友達がオンラインゲームを始めるのでその時間になると元気になりゲームをしていた。
ある時は、あまりにも暇だったから、とYouTubeで見たというアイスクリーム作りをしていたり、またある時は腹が減ったからと自分で即席麺を作って食べていたり。
息子なりに生きようとしているのだろうな、とジーンときてしまう時があった。
元々外で遊ぶ事が好きな人だったが、全くそんな気力が湧かず、自分の体力にも自身がない様子。
どこかに出かけよう誘っても、いかない、そんな元気ない、と断られた。
友達とも全く遊べなかった。
体がもたないし、、、と言っていた。
なんとかして息子が楽しめる時間を作ってあげたい、何だったら興味持てるだろう…
その日から息子が興味を持ちそうな事探しを始めた。
勉強をどうするか。
小学6年の終わりから、
起立性調節障害になった息子。
中学に進学してすぐに入院となった。
オンライン授業を、受けられるとはいっても参加は出来ているが体調が良い訳ではないし、緊張感もないのでただ見ているだけ、そんな感じだった。
退院し、たまに通学すると別授業で教えてもらえる事もあった様だが毎回という訳には行かない。
いくら病気を患っていても、テストの日はやって来る。
息子は中学生になって最初のテストの頃はどんどん体調が悪くなっている時だった。
それでも、どうしよう、勉強しなきゃ、とすごく追い詰められていた。
体調悪く、学校も行けていない日が増えているのに、勉強なんて無理があると思ったが
追い詰められている息子を見て、私が一緒にテスト勉強をすれば良いのかな、と思った。
テスト範囲のワークを私の分もコピーした。
息子の勉強が出来そうな時に一緒に少しだけ進めた。
どうしよう、わからない、できない、とパニックになり泣く息子。
普通じゃないと思った。
息子はもともと明るい性格。
宿題より遊びが大事な子だった。
そんな子が勉強のことでパニックになり泣きじゃくるとは…
何日間か一緒にテスト勉強をしたがパニックになる息子を見て、勉強を辞めよう、と言った。
この時に、起立性調節障害は体調だけでは無く、心にも影響を与える病気なんだ、、、と実感した。
もしかしたら、
小学6年の時に通っていた塾の先生が、
中1最初のテストが結構重要だと言ったことをとを息子は意識していたのかもしれない。
私自身が中1の時の事を思い返してみた。
そんなに勉強した記憶がなかった。
勉強するということを意識出来たのは中3の受験の時のような気がする。
よし、と私の腹を決めた。
取り敢えず、中3になるまでは勉強の事は私からは言うことはやめよう。その後の事はその時の体調、心の状態を見て考えよう。
息子に、
もう、勉強の事は忘れよう。
とにかく今は、毎日を楽しく過ごす事、
健康でいられる事、睡眠時間をとる事、
食事をしっかり摂る事、
それだけを考えていこう。
勉強なんて、高校受験をすると決めたらすれば良い、
テストが0点でも気にするな、
そんな事を伝えた。
とにかく元気な、笑顔の息子に会いたいとおもった。
迎えたテストの日。
体調が整わず、みんなと同じように一日中座っておく事は難しかった。
息子の登校時間か合わせます、と先生が言ってくださり、予備日に全教科を受けさせてもらえた。
意外にも0点は無く、息子にすごいね、というと、バカにするなよー、と笑っていた。
そうそう、こんな感じで良いのだ。
勉強なんて後回しで良い、
もっと適当に楽しく過ごそうよ、と息子に言った。